パンデミックが変える世界
2020-04-16


新型コロナウイルスによる感染症はパンデミックとなった。人類は今後どこに向かうのか?ユヴァル・ノア・ハラリやジャック・アタリなどの現代の知性にNHKがインタビュー。4月16日0時より再放送のNHK Eテレ「パンデミックが変える世界」を観た。その中で特に経済学者のジャック・アタリのコメントが印象的であったため、以下彼の言葉のいくつかを拾ってみた。
まず過去の歴史を振り返ると、スペイン風邪では第一波より第二波でより多くの犠牲者が出た。封じ込め政策により第一波が収まったあと、人々は早く外に出てしまった。それが再流行を招いて第二波が起こり、さらに酷い事態となった。だから犠牲を減らすためには封じ込めの手を緩めないことが大事である。そのためには厳しい政策の方が支持されやすい。安全か自由かと言えば、人は自由ではなく安全を選ぶだろう。つまり強い政府が必要とされる。その反面、強い政府は独裁化が懸念される。しかし、強い政府と民主主義は両立し得る。第二次世界大戦の当時のイギリスは強力な政府を持ちながらも民主主義が維持された一例である。だが民主主義が守られたとしても各国が利己主義に向かう恐れは高く、経済的な孤立主義が高まる危険もある。自国の経済が他の国に依存しないで済むよう見直す傾向は一面の真実ではある。しかし、そうだからといって国境を閉ざしてしまうべきではない。私たちにはもっとバランスの取れた連帯が求められる。この連帯のためにAltruism利他主義が必要となる。利他は結局利己でもある。利他主義とは合理的利己主義であり、協力は競争よりも価値があると言える。この利他主義と並んでアタリの提唱するPositivism(実証主義と訳される)はOptimism楽観主義と混同されやすいがアタリは次のように識別する。PositivismはOptimism楽観主義とは異なる。Optimismは何となくこの災いを切り抜けられるだろうと見るが、Positivismは自分たちの安全のために最善を尽くし、世界規模で経済を変革させていくことができればきっと人類はこの災いに勝てると考えること。その意味で今の状況は未来に向けて産業構造を変革するためのチャンスでもある。アタリの言うPositive経済とは、次世代を見据えた長期的な視野で産業構造を、人が生きるために本当に必要な、食料、医療、教育、情報、研究、イノベーションなどに絞り込んで行くことである。しかしこれが正しいのか又本当にできるかどうかも分からない。パンデミックが去るとまた以前の状態に戻ってしまうのかもしれない。
[その他]

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